「SFの書き方」よりメモ その3

 

第5回 梗概・実作講評

 

宮内氏

 SFはジャンルの性質上、そういう説明をしないといけないことが多いんだけれども、小説の構造上、書けないことも多くて、そのバランスをうまくとらなければならない。

 

大森氏

 SF風味のファンタジイとしては非常によくできていると思うんですが、酉島伝法とか小林泰三のように、一見、幻想的な物語なんだけど、実はその裏にすごくしっかりしたSF設定がある――というのとは逆になっている。むしろSF味をもっとへらして、読者の推測にゆだねた方が、考察好きのSFファンたちに受けるんじゃないかな、という気がします。

 

第6回 論理

 

大森氏

 ジャンル違いだからこそ自由にやれて、可能性を引き出せるとか言うこともあると思います。ただし、そのジャンルの勘所みたいなものをつかんでおく必要はあると思います。

 

月氏

 短編のほうがコントロールはしやすいですね。ただ五十枚と百枚だと、ある程度無駄なことが書けて情勢が聞く百枚より、かつかつの五十枚のほうが難しいと思います。特に本格ミステリの場合は、細かいことを書いているとすぐ枚数超過してしまうので、一撃必殺の伏線をもっとも適切な場所に入れないと、諸説のバランスが崩れちゃう。

 

月氏

 本格ミステリは、一般的に言われる良い文章の書き方とは違うところで、すごく神経を使わないといけない。視点の問題もそうですね。それが窮屈だと思って嫌になる人もいれば、縛りがある方が個性が出ると思う人もいると思うので。そこは書き手の資質だというふうに思います。

大森氏

 SFにも例えばタイムトラベル物での歴史改変の扱いとか、量子論の扱いとか、ミステリほどは定式化されてませんが、いろいろお約束があります。ジャンルの縛りと言う意味ではむしろ外部の人のほうが逆に自由に書ける。

 

大森氏

 SF読者は作中の科学技術の一貫性とかリアリティのレベルを気にするけど、一般読者は意外と、「SFだからなんでもいいじゃん」と気にしない

 

月氏

 ……(中略)……非人間的なものに向かって「なぜ」と問うことで、物語――未知のものに対する暫定的な解釈――を引き出すことが、いまこの時点だからこそ一層求められるのではないかと思います。SFというと大詰めで外へ広がっていくイメージですが、謎を解く話は上手く書かないと、大きく風呂敷を広げたのに最後はものすごくちんまい話になったりする。驚きがあり、かつ謎の核心のちょっと隣ぐらいに、さらなる探求につながる予感みたいなものがあると、SFらしい広がりを感じます。

大森氏

 そうですね。なぞの解決にいわゆるセンス・オブ・ワンダーがあって。さらにその先を想像させるのが理想かもしれません。

 

月氏

 今回の課題では「なぜ」を問うホワイダニットを作品の第一手として設定してみてください。ただしあくまで謎を「解こうとする」物語なので、その結果として必ずしも答えが得られる必要はありません。