第7回 家族
新井氏
浮かんだ言葉を足掛かりにして、とりあえずキャラクターを作っちゃうんです。……(中略)……なんでもいいからひたすらその子に喋らせる。そうすると、喋り方と喋る内容でキャラクターができてくる。
大森氏
(註:それを受けて)……シリーズものなら書きやすいかもしれませんが、単発の長篇で毎回それをやっていると大変ですね。
新井氏
コントロールできるうちは(小説が)書けない。
新井氏
大事なこと言い忘れてた。これ長篇の書き方で、短篇は違います。短編でこれやったら効率が悪いにも程がある。キャラクター設定に半年くらいかかりますから、短篇でこれは絶対おすすめしない。
新井氏
最初になんでもいいから一文だけ思いつく。
新井氏
小説が行き詰ったら、歩くか髪を洗うと、何とかなる。
新井氏
なりきり一人称のいちばんの問題点は、作者がどんなに誘導したくても、キャラクターが莫迦だと気づいてくんない。
新井氏
小説を読むときに、「この作家の成長を見届けたい!」「可能性に賭けたい」などと考える人はほとんどいません。たいていの人は、たんに楽しむために本を取り、読んでいるはずです。
第8回 文学
円城氏
(註:ジャンル純文学の傾向と対策を尋ねられて)……傾向と対策は、人を怒らせないことです(笑)
円城氏
……数が多いから、基本的に一回しか読まれず、ダブルチェックは入れられない。だから、梗概はちゃんと書いたほうがいい(笑)。
円城氏
梗概は三枚で終わる短篇にして、それを五十枚にするのがスタンダードですよ。
円城氏
純文学と、SFやエンタメの違いとして、文章を素直に読めるか、ずっと行きつ戻りつしなきゃいけないかというのはありますね。
円城氏
文学とエンタメの差があるかはわからないですけれど、文章を気にするかしないかは大きな違いとしてありますね。文章とは何かというのを考えつつ書くのか、情報を速やかに流し込むことを目的にするのかというのは、意識して切り替えられた方がいい。
円城氏
小説はクイズのような正解がないので、AIに判定されようが何しようが、結局人間が入ってきていいといってしまえば、いいものなんです。その辺の変な隙間をついていくというのは大事なことで、SFのある分野のノリと繋がるところがある。SFも物理化学数学ができるかとは関係なくて、ほら吹き能力と、ほらで笑う能力ですよ。