第4回の講座(9月19日)のための覚書

 今回もまた、忙しくなってドタバタする前に提出。

 

■今回の梗概について 

ミュルラの子どもたち – 超・SF作家育成サイト

 前回の記事で、まったくの別世界はやめておいたほうがいいと書いたのだけれど、それはあまりにも舞台設定に説明を要する場合であって、多少エキゾチックな舞台なら許されるのではないかと思う。新しい世界観を出すのなら、そして短篇なら、現実世界とどこか一カ所改変、くらいにとどめておくべき、みたいなことをこのブログの過去の記事で、「ゲンロンSF創作講座全記録」から引用した気がする。

 さて、考えてみれば、僕は性別のまったくない世界を書くのは初めてな気がする。そういう意味では初めての試み、ということになる。どんなことになるだろう。

 アピールにも書いたが、最初は男性が女性を育てる話にするつもりだった。つまり、巨大な「母なる樹」が男性を生む世界だった。この世界ではなぜか女性は樹木として生まれ、歩き回ることもないししゃべることもない。そして、人々が眠るときはその木のうろの中で眠る。長い冬の間は、その中で丸くなって過ごす。

 で、なんとなく暴走する母性だとか、なぜこの世界の女性は明らかに不利になるにもかかわらず、こうした存在の様式を選んだのかみたいな謎解きにしようかと思ったのだが、僕があえて女性が抑圧された舞台を描く理由が見つからなかったのと、自分が少女を育てる文章を書くと、個人的願望が垂れ流しになると気づき、この設定は破棄した。

 同様に、女性が男性の苗木を育てる話も、別の欲望が暴走してだだ漏れになり、作品を損なう可能性に気づいてやめた。そういうわけで、ジェンダーレスな世界にしてしまったのだが、これは成功するのか失敗するのか、それはよくわからない。それでも、一度くらいならそうした世界を描く値打ちはあると思う。

 

■今回の実作について。

アーカーシャの – 超・SF作家育成サイト

 実のところ、かなり迷った作品だ。講座でいただいたアドバイスツイッターで拾った意見を元に、議論の対象をリベンジポルノと児童ポルノだけに絞り、盗撮やその他の違法な画像については扱わないことにしたのだが、これで正解だったかどうか。

 それとは別に心配しているのは、この作品が短すぎることだ。僕は必ず五十枚で納めることを心掛けているのだが、今回は規定字数の半分になってしまった。原因としてはそれほど複雑ではなく、サブプロットがほとんどないことなのは間違いない。つまり、主人公の周りの起承転結で話が終わっており、主人公が解決すべき別の課題や、主人公の課題と比較対象となる事件が起きていないのだ。

 問題があると気づいているのなら、なぜ対策しないのか。一つには、サブプロットを考えると、話全体の焦点がぼやけるのではないかと考えたからだ。たとえば、ライバルキャラを設定し、よく似た問題を解決させることで話を複雑にすることも可能だったと思う。ただし、そうすると今回のテーマの初恋がかすんでしまうのでは、と心配になり、適切なサブプロットを見つけることができなかった。初恋の女の子の写真を持つことの何がいけないのか、みたいな話に対して、あまり複雑な議論を持ち出すと野暮ったくなる気がする。どっちかといえば、理屈よりも感傷で攻めたい*1

 もう一つの理由としては、これは短いなりにまとまっているのでは、という感覚がぬぐえなかったことだ。つまり、これ以上付け加えるのは蛇足では、と気になったのだ。要するに、このお話を語るのは一万字でちょうどいいのであり、余計なことをすべきではないのではないか、と思われたのだ。講座で評判が良かったら星新一賞にも応募できるし。

 それはそうと、タイトルを間違えたのは悔しい。とはいえ、以前運営側から「一度提出したら修正はやめてね」という趣旨のメーリングリストが回ってきたので、今回は素直に諦める。がっくし。

*1:ところで最近思っているんだけれど、やっぱりSF的にかっちりした議論をするよりも、面白い話で振り回すほうが読者はやっぱり喜んでくれるみたいで、そういう期待にはきちんと応えたいのだけれど、僕はハードSFのくどくてまどろっこしい議論パートも好物なのだ。