第5回の講座(10月17日)受講後の覚書

■梗概について

アムネジアの不動点 – 超・SF作家育成サイト

 今回は、思いのほか場面転換で世界の移動を行う人が多かった。そのせいで発想が平凡と思われたのか、今回もまた実作段階に進むことはできなかった。

 講座でいただいたコメントは次の通り。

どこか惜しい。類似した作品が多く、どこを売りにするかを考える必要がある。また、ギミックとドラマが噛み合っていない。特に、ラストのクライマックスと成長のタイミングにずれが見られる。逆境に置かれた中での成長物語と、場面の切り替わりの仕組みに関連性が見られない。ちなみに、小説の中に入って戦う話には、「文学刑事サーズデイ・ネクスト」というのがある。

 そういうわけで、評価は芳しくない。

 同じようなネタがあるという意見に対しては、その通りなのだけれど、創作する上での姿勢とかその辺の話も持ち出して、ほかの梗概とは差別化をはかったつもりだった。とはいえ、そうしたメタフィクション的な手法もまた平凡だと言われてしまえば、黙るしかないだろう。

 

■実作について

ミュルラの子どもたち – 超・SF作家育成サイト

 ほとんど言及がされなかった。一言、

結構面白かった。

 とだけである。まあ、全実作中の上半分には入れたということで良しとしよう。実作段階に進んでいた蘭銅氏と小島氏の作品のほかで、名前だけでも出てきたのは、揚羽氏(一般誌に載っていそう、とのこと)、今野氏、藤琉氏(それなりに読める、とのこと)、中野氏、宇露氏だけだ。あともう一人上がっていたはずなのだが、メモの字が汚くて読めなくなっている。

 

■今後の展望

 さすがに実作段階に進んでいないのに点をもらおうという見通しは甘すぎたようだ。それでも、自分はひたすら実作を書き続けることにする。理由はいくつかあるのだけれど、単純に与えられた課題に取り組むだけでも、一年で十一作品が完成する。試行錯誤すれば、それだけでも得るものはあるだろう。現に、原稿用紙五十枚の話を書くとどんなものか、という非言語的な感覚が身についていく実感がある。言い換えるなら、五十枚でどれくらいの話を語ることができるか、というペース配分だ*1。まだ身についていないテクニックも、試せる機会がある。

 時と事情によっては、この講座を二三年続けることだって考えている。それに、デビューの方法はゲンロンSF創作講座の最終講座だけではない。星新一賞創元SF短編賞もある。特にできのいいものを加筆・訂正の上で送るのもまた作戦の一つだろう。ここの講座で受けが悪くても、他で拾ってもらえる可能性はある。

 現に、ゲンロンSF創作講座は非常に有意義で濃密な時間であるのだけれど、同時に非常に癖がある気がする。創作の現場、作家や編集者と直接対面する熱さがある一方で、直観で梗概が選ばれるという非常に主観的な面がある。これが気まぐれなものとして感じられ、苦手な人はきっといることと思う。とはいえ、創作活動自体は元からそうした性質があり、やむを得ない。自分だってどうしてこれが好きか、明確に説明できるケースの方が少ない。それに、まったく主観的ではありながら、少なくとも実作の順位については非常に納得できるため*2、梗概段階での選考の理由も、僕にはまだ分からないがかなり信頼できる判断だと思われる。なので、あまり不満を述べずに淡々とアイディアを出していくつもりだ。それに、途中でアイディアが枯渇するようなら、将来にわたって商業でやっていくことは厳しいはずで、これもまた自分を鍛えるいい方法だと考えている*3

 

■第6回の課題にどう取り組むか

長距離を移動し続けるお話を書いてください – 超・SF作家育成サイト

 そうはいうものの、なんとなく見えてくる傾向もある。たとえば、突飛でインパクトがある設定のほうが選ばれやすい。SF的に破綻していては困るのだが、ネタかぶりはどうしても評価が下がる。それと、今回惜しくも選ばれなかったのだが、今野氏が梗概のフォントを変えていたことの評判が良かった。僕なんかは、裸の文章そのもので勝負すべきであって過度に修飾するのはいかがなものか、と思っていたのだけれど、確かに梗概はある種のプレゼンであり、視覚的なテクニックを使ってもいいのではないか、と再考することとなった。

 で、具体的な作戦としては、かなり尖った設定を出すのが適していると思う。それと同時に、与えられた課題が何を求めているのか、をきちんと理解しないといけない。

 今回は、単純な話でありながら、面白く語るように求められている。なので、単純にどこからどこへ行きました、では通らないだろう。逆に極端な話、場所が移動していればどんな梗概であっても構わないのではないか。

 それと同時に、無人探査物はやめた方がいいはずだ。どう考えても円城氏の「バナナ剥きには最適の日々」とネタが被る。やるんだったら本気で円城氏に全力で喧嘩を売る覚悟がいる。あるいは明確なアンサーとする必要がある。講座的にはその方が盛り上がるかもしれない

 そういうわけで、最初のうちは冗談半分であった、原子核から電子の軌道まで移動する極小の存在、を主役に据えることさえまじめに検討してもいいのではないか、という気がしてきた。それか、確率的に自分と同じ存在に出会うことになる、十の十乗の百五十乗メートル向こうの宇宙空間まで移動する、これまたハードなSFとか*4*5

 やっぱり、ちょっと関心があるテーマで書いても選ばれないらしく、すごく好きで延々語りたいものじゃないとだめらしい。つまるところ強烈な一点突破を目指さなければならない。厳しい戦いになりそうではあるが、今月は一週間ほど余計にあるので、ネタ探しを頑張ることとしよう。

 

■それと、最近良かったこと

 品川氏が僕の作品面白くて二回読んだっておっしゃってた。感謝感謝。

 それと友人が、カクヨムで連載している作品の続きを読みたいと言ってくれた。

 

 以上。

*1:一時期、やたらと細かい描写をしていた時期があって、そのころだったら同じ話を倍の長さで書いていた可能性がある。自分語りをしたかった磁器のことだ。

*2:今回も金賞と銀賞を当てたので僕のささやかな虚栄心が満足されている。

*3:講師陣に時間がない時には、実作に進めなかった作品に一切点が入らないのも、この講座の気まぐれな点といえばそうなのだけれど、むしろ本来は読む必要なんてまったくないのに読んでいただけた回がむしろボーナスであり、本当に感謝しないといけないのだと思う。

*4:同一のハッブル体積とかそういうキーワードを使えばヒットすると思う。

*5:ただ、その目的が元カノに会うとかそんなのだったら、ちょっとありがちになっちゃうかもしれない。