「お前、手癖で書いてるだろ」
もちろん、こんな直接的な言い方はしていない。
ただ、そうだと見抜いてくれてうれしかったのは本当だ。
それと、渡邉氏には、印刷した梗概に赤ペンで記入したものをいただいた。
感謝感謝。
■梗概へのツッコミ
誰のコメントであったのかあいまいだが、メモをそのまま記すとこうなる。
- そもそも、これはSFなのか。
- 枠物語という形式を採用する必要はあったのか。枠物語を導入する場合、その内側の物語を導入することで、その外側にも何らかの変化がないと、導入する意味がない。
- 現状、著者が淡路島に行ってきた経験が生のまま出てきているだけだ。
- 老人になる理屈がわからない。
- 実作は敬体で書くのか。常体のほうが読みやすくないか。同じような文末になるので、リズムを取るのが難しくないか。
- 異国とは、インドや中国と理解して構わないか。
- ラストで全てが幻影であったことになるが、どこからが虚でどこからが実であるか、その辺をはっきりさせてほしい。
- 今までの作風と比較したとき、ここまで幻想に振ったのは初めてなので、より幻想に寄せてほしい。
- この場合、枠物語にすることで、どこからが本当の話なのか、曖昧にできる。
- 読者がどこまで日本書紀の知識があるか、疑問。
- 普通の旅行者や好事家が、専門家が見たことも聞いたこともない資料を見つける、という設定にはかなり無理がある。
- たとえば、地元の神社の柱に何か挟まっていたとか、新しい絵巻を見つけたとか、何かしらの言い訳が必要。
- それか、神社のところで何か夢を見るとか。
- 枠物語の話とも関連するが、ただ、語り手が「新しい伝説を見つけました」で終わってしまっては、物足りない。
- 実在する淡路島を舞台とする理由は何か。
- 近畿地方の人間にとって、首都圏の人間に比べてかなりリアリティを持った存在になる。その重みは考えてほしい。
- 明確な理由があるのなら、それで構わない。
- 樹木を抱えていく、といったけれど、細い木である描写がなかったので驚いた。
- 当然海を渡る描写が必要になってくる。
- 自分が淡路島と明確にした理由。香木がたどり着いた地点の海流を、海上保安庁の図で確かめると、あまりこの辺には流れ着きそうな感じではなかった。
- そういう謎解き的な要素があると、面白くなる。
■実作へのツッコミ
一人称で書くと、ついつい自分というものが出てくる。まるで自分が苦しんでいるかのように、大げさに綴ってしまう。それを避けるためだろうか、感情的にどこか突き放したような文章にしてしまうことがあって、それが淡々とした感じになってしまう、らしい。
- いろいろ試している段階なのだと思う。ただ、この講座では、毎回違うことを試みるよりは、同じことを繰り返し練習する方がいいのではないか。つまり、レベル1からレベル7まで進んでいく、みたいな。毎回違うことをしていては、毎回レベル1からスタートすることにならないか。
- 金と法律の話が、特に手癖で書いているような印象を受けた。この脱線は本筋のどこに位置づけても、話は特に破綻しない。つまり、ブロックとして遊離している。
- 中性子星の構造を説明する辺りもかったるい。もっと簡潔にした方がいいい。言い訳が冗長で、無駄だけれど読み手を楽しませている感じがない。森見登美彦のような冗長な文体にはものすごく手間がかかっているし、しかもそれを感じさせない。非常にレベルの高いことをしている。
- たくさん書けるのはいいが、新人が増産できるかどうかは見られていない。
- 逆に、ウェブの連載なんかは、毎日書くことを求められることがあり、そういう場でなら評価されるかもしれない。
- 得意分野は何か。ハードSFかファンタジーか。
- 情報体がどういう姿をしているか今ひとつわからない。小川一水「天冥の標」が参考になるはず。あれは理解可能な異星人の癖にちゃんと異星人らしい。
- バックアップがある描写なんかは好き。ポテンシャルはある。
- 主人公が「中性子過剰核生命体」をがかっこわるいと言っているが、「エイリアン」のほうがかっこわるい。たぶんそういうギャグだとしても、語り手が天然なのか作者が天然なのかがわからない。
- 未来のジェンダー観はいい。
- 湖を水と海に分けるあたり、唐突な日本語への言及に戸惑った。
- ルーディー・ラッカーあたりが参考になるか
- みんな科学技術に金を渋る、というギャグは良かった。
- 結局みんな金に困ってるんだな、って話だって分かると面白い。
- 一人称は書きやすいってのは誤解。あれは手癖で書けてしまうのを、書きやすいと錯覚しているだけだ。
■個人的呟き
「ミュルラの子どもたち」の文章のほうが以前評判が良かった。
設定を細かく語ると手癖の文体が出るようだ。
以上。