昨日の感想交換会でいただいた意見のメモ

■最終実作梗概について

  • 物語の層が三つあることは特に問題は感じられない。特に、二番目のアラビアンナイトの層が面白い。一方で、一番外側の現実が普通っぽい。そのため、もしも後輩との会話が妄想だったとしたら、現実パートで何も起こらないことになってしまう。一番外側の層を面白くする方法はいろいろあるけれども、個人的にはここが面白かった。脳と知性、非日常といったテーマが妙に面白い。
  • 私も三つの層があることは問題ないと思う。気を付ける必要があるのは、話の本筋をそれて枝葉を豊かに茂らせすぎてしまうことか。ディテールを書きたくなるだろうが、バランスに注意する必要がある。また、外枠の主人公の物語は基本的に閉じていてドラマになっていない。それと、後輩の「平凡」な文章を具体的に示してほしい。
  • 構成が緊密で、やりたいことからずれてしまうことはないだろう。読んでいて難渋にもなっているのに問題は起きていない。過去の作品も踏まえたうえで、指摘できる問題点は次の通り。細部をしっかり詰めているので、因果律が強すぎる。そのため、どんでん返しのためのどんでん返しとなっていて、私のようなタイプの読者はカタルシス感じない。また、安易にいい話にしようとすることに対する照れというか、ブレーキがある。加えて、作品のいくつかで親がこっそり支援していたことが明かされるが、読者としては自分で切り抜けてもらいたい。
  • アラビアンナイトが面白いので、現代パートをもっと面白くしてほしい。
  • アラビアンナイトの部分は梗概だと抑え気味な気がする。とはいえ、この人は梗概に書かれていない文章の運びや言い回しで面白いことが多い。細部をつめればいいのだと思う。現代はもっと派手にしたほうがいい。それと三つの層があることの意味を確認したい。たとえば二つ目は一つ目の語り手の心情を表すとしたら、三つ目は深層心理を意味している、などの機能が欲しい。
  • 構造についてのコメントは難しいので他の部分について。現実パートの人たちをもっと強烈にしたほうがいい。悪友をもっと悪く、リアルに嫌な奴にしてほしい。これだけだと主人公の独り相撲に感じられる。勝手に気落ちしているだけで、具体的には何にもしていない。悪友に言い返すとこさえしていないキャラクターをもっと活躍させてほしい。自分が後輩を守った、ということも勝手な思い込みに見えてくる。劇中劇はどのくらい投影か。
  • 現代パートの魅力に乏しい。登場人物がもっと有機的に絡んだほうがいい。現代パートにはどんでん返しがない。

■第9回実作について

  • 普通に読めたが一人称のほうが読みやすかったかもしれない。というか、三人称である必要性を感じられなかった。というのも、語られるのがほとんど青年の思っていることで、内面に踏み込むのなら一人称のほうが適切。全体的に文章量が自分の好みからすると多めで、デバッグモードという言葉が出てくるまでが長い。それが好きな人もいるかもしれないが、自分には合わなかった。テンポもやや遅い。仮想世界なので、もう少し何でもありにしてもいいかもしれない。もう少し伏線が欲しい、独白のトーンが変わるとか。情報を出すタイミングをもう少し早くしてもいいかもしれない。あるいは、世界がバグるなどの展開があってもいい。設定が若干あやふやなところがある気がした。参考資料「汝、コンピュータの夢」
  • 文章はうまいが個々のエピソードで負けていると思った。けれども、普通の先輩との話からデバッグモードのあたりから面白くなった。この展開は意外性があった。多くの人が想像するような最大公約数的な恋愛シミュレーションっぽいところから、こういう趣向なのね、と安心した。この実作に関してはいわゆる恋愛という建付けをしている。問題は「落とす」という言葉で、ここで邪推してしまった。先輩の正体が敵の戦艦で撃墜するのかとか、フリーズさせるという意味で落とすのか、などなど。ところで、三人称の地の分で先輩と呼ぶのはなれなれしいかもしれないけれど、他にいい言い回しはないだろうか。それと、この話は主人公がどの程度人間として責任を持てるかという話なのだが、先輩の正体を見破るのを失敗しているので、ゲームには負けている。先輩と付き合うかどうかについてもあいまいになっている気がする。ロジックではなく空気でやろうとしたのか。
  • 世界観が透明できれい。特に、トンネルの中の星空が美しい。全体的なテンポが速いところとゆっくりなところがあるといい。緩急が欲しい。
  • 人工知性や妹との関係性が面白い。先輩とのやり取りも軽妙。ただし、終盤が納得いかない。それ以外は非常に楽しめた。

■皆様、お疲れ様でした。