ゲスト講師からいただいた感想、それから第5期生への更なるおせっかいなアドバイス                    

■ゲスト講師の皆様からいただいた感想

 最終選考会から一週間が過ぎ、長い日記を書いたり美術鑑賞に行ったりして、気分が幾分落ち着いてきた頃、ゲスト講師の方からいただいたコメントを読むことができた。評価が定まって冷静に読むことができる時期なので、ちょうどよかったように思う。この場を借りて、御礼申し上げます。

 さて、どれがどなたのコメントだったかについては伏せる。ただし、重要だと思ったのが次の指摘だ。

  • 構成はうまくまとまっている。
  • しかし、語り手が失ったのが本当に愛と友情だったかは疑問。
  • 気負い過ぎ。
  • ラストは気持ちよく広げるか、気持ち悪くたたむか、どちらかにすべき。

 以上のことを鑑みるに、構成そのものは悪くなかったようだ。つまり、必ずしもメタフィクションを禁じているわけではなく、技術的な水準で批判されたわけではない。しかしながら、そこに過剰に私小説的な煩悶を含めるべきではないようだ。入れてもいいとしたら、それは読者が容易に感情移入しやすいように配慮する必要がある。個人的には、できるだけわかりやすいようになるように努力はしたのだが、受け入れてはもらえなかった。

 一方で、合評会での評価は良かった。プロとして活躍した期間が長いほど評価が厳しくなるタイプの作品なのかもしれない。あるいは、プロになろうと苦悶している同世代にとってはより共感しやすい何かを盛り込むことには成功した、ということなのかもしれない。

 また、何かに夢中な人間を書くことそのものに失敗したわけではない。つまるところ、小説以外に憧れている若い人間の、感傷的な作品を開拓する余地がある可能性がある。

 それと、ラストに納得がいかない、という指摘は最終選考会とも共通していた。主人公が何も変化していない、というのだ。これも、私小説的な雰囲気を書くうえで失敗しがちなことだ。主人公が再び現実に立ち向かう力を取り戻すことをテーマにしたつもりだったが、感覚だけで書いてしまったので、実の単にところ最初に戻っただけだった。落ち込んでいた人間からすれば、落ち込みのないプラマイゼロに地点に戻ってくるだけでもありがたい話なのだが、読者からすればそこで終わってほしくない、ということなのだろう。

 

■そういうわけでの反省会、それから第5期生への更なるアドバイス

  • 梗概・小説を書く前に、三行ほどにあらすじをまとめておく。
    • そのミニ梗概は、単に起承転結を書くのではなく、主人公がどのような変化を経るかを明記する。
    • ミニ梗概を書くのが苦手な人は、梗概・小説を書いた後で、それを三行にまとめ、そこから梗概・実作を修正しよう。
    • 要するにこういう話なのだ、ということがわかれば推敲しやすい。余計な要素が見えてきて削りやすいし、説明不足の個所も補える。
      • 最終選考会の記事でも引用した、「根本的なところで、登場人物に対して、物語の中でどんな役割を担わせるか、を理解し、コントロールできていないと、長編を書くことなどおぼつかない」とはこういうことを指すと思われる。
      • つまるところ、小説の書き方の基本に常に立ち返ること。
    • 梗概を提出する前に、一度誰かに見てもらおう。
      • 合評会があるので、梗概→実作段階での修正はできるけれど、梗概の段階で点が入らないと、高得点は望めない。
      • 意味が分からない箇所がないかを特に重点的にチェック。
    • 私小説は難しい。
      • 創作活動の起点に個人の経験があることは否定しないけれども、関係のない第三者からすれば、赤の他人の人生にどうして感情移入しなければならないのか、となる。
      • 普遍性を得るように、適度に抽象化しよう。
      • それでも書きたいなら止めない。それが本人のテーマなのだろう。
      • ただし、主人公が何も変わりませんでした、みたいな話はダメ!
        • 私小説風であってもいいが、それは登場人物であってあなたではない!

 

■細かいところまで読んでいただけている!

 まだ完全に立ち直ったわけではなく、一つか二つ短篇の構想が浮かびはしたが、それを形にするまで至ってはない。しかしながら、それぞれの指摘事項を見ると、読んでいただけたのだな、という思いがして、厳しい感想をいただきはしたけれども、読者がいるという確かな喜びを、また求めてしまうかもしれない。

 もともと自分を維持するため、正気を保つために書いていたところから、ずいぶん遠くまで来てしまったようだ。そして、これからどうするかどうかは、焦らずに考えていく。

 

 比較的短いが、以上。