ゲンロンSF創作講座実作「重力崩壊と私掠船、その船医と強欲な商人」振り返り

妙にアクセス数が多いと思ったら、近々第6期の講座があるのね。

がんばれー。

 

■あらすじ

重力崩壊と私掠船、その船医と強欲な商人 | 超・SF作家育成サイト

 主人公と相棒が中性子星に墜落する。そこで生命体と遭遇するが、主人公たちはこの中性子星が間もなくブラックホールにつぶれてしまうことを知る。生命体と協力して脱出するが、すべては相棒の仕組んだことであった。主人公は激高するが、やむなく彼とともに高跳びする。

 

■自分で読んだ感想

いくつか興味深い要素は見られる。数万年の寿命を持ち数年の旅を長いと感じなくなった人類、中性子過剰の環境で生きる生命、それから連続量しか理解できない(整数の概念を持たない)知的生命体。あるいは互いの境界が曖昧で、自分という他人の概念があるかもわからない磁束でできた生命。これらをもう少し丁寧に扱っていたら、もうちょっと面白いものにできていたはずだ。

ファーストコンタクトの様子をギャグ的に処理してしまったのははっきり言って失敗。全体的にギャグが滑っているし、設定を説明している個所が多すぎる。とぼけた文体は円城塔オブ・ザ・ベースボール」を真似たつもりだった気がするが*1、正直似ても似つかない。というか冒頭エヴァじゃん。

それに、中性子からの脱出を阻んでいた壁の正体についてもいい加減。過去の作品を振り返えるうちに、時間が足りなくてロジックを詰めていない箇所にどんどん気づく。ロジックがいい加減ってのは、例えば壁の正体を設定するにあたり、磁束でできた生命を跳ね返す壁とはどんなものかについて全く考察していないことだ。

やっぱり徹底的にハードな方向性にもっていかないとダメなのかもしれない。でも、それをやったところで「竜の卵」を越えるにはまだまだだ*2

それと、最後はやむなく元の相棒についていくが、これも若干状況に流され気味だ。

 

■第三者からの感想

イーガンのようなハードなアイディアだけれど、地の文で説明をしすぎている。読者が必要としていない情報も多い。説明ではなく、描写で示すべきだ。加えて、キャラクターに魅力があまりない。

これが見せたいんだな、というポイントがなければ、評価しづらい。

手癖と思われる箇所が多い。読者に必要のない情報は、どこに位置させても構わない、つまりブロックとして遊離している。読者を楽しませるのに失敗している。

説明も長い。もっと簡潔でいい。

バックアップ、未来のジェンダーは〇。

 

■まとめ

  • ハードな設定をもっと詰める。
  • ハードな部分をもっと大切に。
  • 論理展開をもっと丁寧に。
  • 説明の台詞は必要な分だけ。
  • 説明ではなく描写。
  • キャラに魅力がいる。

 

■というか

同じ失敗が多いので段々落ち込んできた。

1か月に1本というペースだと、前回の作品を反省し、それを次回に生かすのが難しい。冷却期間がほぼないからだ。

とはいえ、これだけ作品のストックが増えてくると自分の欠点の方向、油断するとやりがちな手癖に気づけるのはいい。

 

以上。

*1:円城氏が実作の担当講師だった。

*2:絶滅間際の知的生命体を救うという点では小川一水「老ヴォールの惑星」にも似ている?