概要
桃鉄に出てくるムー大陸の地名はほぼハワイ語であり、最後につく「プラ」はサンスクリット語である。
序論
桃鉄に大型アップグレードが来たので久し振りに遊んでいる。実は八月に買ったのだが、百年を二連続でプレイして一度飽きてしまったのだ。
しかし、ムー大陸マップはゲームバランスが大幅に変更されており、全然感覚が違うのでまっさらな気持ちで楽しめている。かなりの高頻度でムー大陸が目的地になるし、現金がものすごい勢いでばらまかれるし、IT長者や感染症などのイベントもないようだ*1。未知の物件も多い。すごく楽しい。
そう、未知のムー大陸の地名や名産が多い。で、今回のアップデートでは雑誌「ムー」が監修したらしいのだが、このムー大陸の地名の出典はあるのだろうか?
アヌエヌエ=プラとか、モアナ=プラとか、これらの地名は何語なのだろうか?
というわけで、調べてみた。元ネタ探し大好き。
ムー大陸の言語について
物件駅の名前は次の通りだ。
ランバラ=プラ、アヌエヌエ=プラ、ナヘレ=プラ、マホ=プラ、スーパーハワイ、カウラ=プラ、アクワ=プラ、オナラマ=プラ、ヒラニ=プラ、エレ=プラ、マルル=プラ、プアラウ=プラ、メオレケ=プラ、ロコロコ=プラ、エルマ=プラ。
作中のムー大陸の物件のリストは次のサイトを参照した。
【桃鉄ワールド】ムー大陸エリアの物件一覧【桃太郎電鉄ワールド~地球は希望でまわってる!〜】 – 攻略大百科
加えて、カード売り場はモアナ=プラとヴァグラヴァ=プラ、カジノ駅はモイラ=プラという名前だ。
この名前を見ていると気づくのは、一部の例外を除いて濁音が無いという点だ。これはまさに、多くのポリネシアの言語の特徴である。
例えばハカ*2で有名なマオリ語に出てくる音は母音が長短のa, e, i, o, uであり、子音はm, n, ng, p, t, k, wh(フと読む), r, w, hだ。音節構造はV, VV, CV, CVVであある*3。
ハワイ語だと母音が長短のa, e, i, o, uであり、子音はm, n, p, k(ニイハウ島方言ではt), ʻ(オキナと呼ばれる声門閉鎖音),w, lで、音節は(C)Vだ*4。
ここまで見てきて気づくのは濁音のないムー大陸の地名には、タ行の音がないことである。よって、ハワイ語がベースになっていると仮説を立てることができる。
では、実際に意味を調べてみよう。参照するのは次のサイトだ。lとrの違いがないので、検索しやすそうだ。
Hawaiian Dictionaries
地名の意味
緑はすっきりした解答が得られたものを示す。黄色は疑問有り、赤はハワイ語ではないものだ。
ランバラ=プラ、濁音を含む(大陸の北東)
アヌエヌエ=プラ、ānuenue 虹
ナヘレ=プラ、nahele 森、茂み
マホ=プラ、不明 日本語の魔法?
スーパーハワイ、文字通りの意味
カウラ=プラ、kaula 紐 kāula 魔術師、予言者 Kaʻula 島・風・海鳥の名前
アクワ=プラ、不明 ラテン語のauqa?
オナラマ=プラ、不明 二語だと解釈すると ona 三人称代名詞 lama 光、ともしび
ヒラニ=プラ、不明 hiʻilani なら、赤子の世話をする、賞賛する、など。学術的でない赤ちゃんの名づけのサイト*5によれば、天国のような
エレ=プラ、ʻele 黒い、胎児など
マルル=プラ、malulu 干上がることのない泉
プアラウ=プラ、pualau 子どもが尻で背負う(稀な言葉) 二語だと解釈すると、pua 子ども、花、矢、現れる、など puʻa 口笛 pūʻā 群、など lau 葉っぱ、たくさん、など 「沢山の花」?
ロコロコ=プラ、lokoloko 小さな池、水たまり
メオレケ=プラ、二語だと解釈するとmeʻo からかう、芽を出す leke 来る 少し苦しいか。
エルマ=プラ 少し苦しいが、lumaはlumaʻiと同義で、動揺とか転覆とかそういう意味がある。ネガティブな言葉なので疑わしい。
モアナ=プラ moana 海、広い(ただしこのカード売り場は海に面してはいない)
ヴァグラヴァ=プラ、濁音を含む(位置的にはハワイの南、大陸の北端)
モイラ=プラ、不明、二語と解釈するとmoはmokuの略で切る、地区、舟。ilaは暗い、色を変える、など。ギリシア神話のモイラと解釈したほうがすっきりするか
上記のように、ある程度は(語彙の弁別に重要な長母音やオキナを無視してしまっているが)ハワイ語の語彙で説明ができた。また、自然や魔法にかかわる言葉が多かった。ただし筆者にはこれが文法的に正しいかどうかはわからない。
濁音を含む都市についてだが、位置的には現実のミクロネシアやメラネシアなど、語族の異なる領域ではない。
「プラ」とは?
では、都市名のプラとは何か? 個人にはこれはサンスクリット語の城塞、都市、町、家を意味する言葉だと思う。*6。例えばアヌエヌエ=プラの大意は、「虹の都市」ということになるだろう。
オカルト好きな人はインドに関心があるだろうし、しっくりくる。
結論・今後
桃鉄のムー大陸の地名のほとんどは、ハワイ語とサンスクリット語の組み合わせであるとわかった。
今後の調査としては、明らかにポリネシア系ではない言語に由来するであろうランバラとヴァグラヴァの語源を明らかにしたい。どちらもア段を多用しており、インド系の言語と関係する可能性がある。一方で、ポリネシア諸語にも濁音を多用する言語があるため、その可能性も検討したい。
以上。
*1:確信はないのだが、収益率がマイナスのIT物件が最初からプラスなので、イベントが発生しないと推測している
*2:ラグビーなんかの「カ マテ! カ マテ! カ オラ! カ オラ!」っていうあれ。
*4:Hawaiian language - Wikipedia