対決! 人工知能VSハナモゲラ語!

ある日のことである。

僕はお絵かきAIの一つである、お絵描きばりぐっどくんで遊んでいた。そのとき、何気なくでたらめを入れると、思いがけない物が生成されて、そのランダムさに魅了された。

 

また、英語を入力してもきちんと認識したのには驚いた。というか、おそらく日本語を英語に自動翻訳して、人工知能に突っ込んでいるんだろう。現に、誤訳が原因らしい奇妙な生成物が出てくこともあった。また、出てくる人物も外国人が多いのもそれが原因だろう。

 

「それでは」と僕は思った。「外国語もどきを入れたら、人工知能はそれに意味を見いだすんだろうか?」

早速、中国語とベトナム語の中間のでたらめを入れてみた。すると現に、東アジア人の顔が生成されたのだ! 衣服も清朝とも人民服ともベトナム風ともつかないものである*1

 

これに気を良くした僕は、でたらめのドイツ語風の文字列を入れてみた。すると、ドイツ人らしい男性が自転車に乗っている画像が出てきた。

 

同じくフランス語もどきで。これはカトリックの司祭だろうか?

 

ヒンディー語ともサンスクリット語ともつかない物からは、極彩色の仏像が現れる。

 

いんちきラテン語からは何かの写本が生成される。

 

 

アラビア語もどきからは、カリグラフィーのようなものや、アラブ人の顔が出る。

 

 

ポリネシア語のような響きにすると、マオリ風の女性が出てくる。

 

ローマ字の日本語にすると武士が出てきた。

 

なかなか面白い結果になった。

これを見ると、人工知能が言語を理解しているというよりは、確率の高いもの、それっぽいものを(ある意味ではあてずっぽうに)出力しているにすぎないと実感される。

当分は、人と人工知能を見分けるには「不条理な発言をして『は?』と言ってくるかどうか」が有効な気がする。言い換えるならば、「無理に正解を当てようとしてこない」ことだろうか。

 

おまけ。

不条理なのは、どうしてもケンタウロスが出せないと言うことである。なぜかただの馬か、騎乗する人になる。人馬一体の姿を不条理として排除するのか?

 

また、目が三つある妖怪がどうしても出てこない。学習させたデータにないのか、「何かがn個ある」という指示が理解できないのか、それはわからない。

 

 

以上。

 

 

 

 

 

*1:LINEのスクショを貼る。入力した呪文がわかるようにするためだ。

トルコ、イスタンブール旅行での注意事項(あるいはインフレについて)

イスタンブールに行ってきた*1

イスラム世界を舞台にして書いた小説の責任を取るためにイスラム圏に行ったというわけではなく、昔から行きたかった。
そして、いつものように「地球の歩き方」のお世話になった。
だが、トルコ編は2019年に発売された版が最新版で、今となっては事情が大きく変わっていることが多い。そこで、他の人の助けになるかもしれない点について、メモしておく。

インフレ、お金のこと。

博物館の料金は大きく値上げしている。

左が地球の歩き方、右が2023年8月の実際の値段で表記する。

トプカプ宮殿(ハレム含む) 60トルコリラ → 950トルコリラ

地下宮殿 20トルコリラ → 350トルコリラ(夜は550トルコリラ

ドルマバフチェ宮殿 90トルコリラ(全施設の見学)→ 650トルコリラ(全施設の見学、イスタンブール市民以外)

軍事博物館 10トルコリラ → 300トルコリラ(ここはクレジットカード支払いのみ受け付けている)

 

ただし、アヤ・ソフィアはモスクになったので寄付制。立ち寄ったほかのモスクも寄付制。

かなりインフレが激しく、チップなどに使えそうな小銭がなかなか手に入らないのは困った。1トルコリラ硬貨を見かけたのはほんの数回だ。

食費もかなり上がっていて、400トルコリラ使うこともあった。お土産もたくさん買い込んだので、なんだかんだで1日に1000トルコリラ弱使ってしまった。

だたし、これは8月に自分が行った時点なので、また値上げしているかもしれない。

責任は取りかねる。

 

【追記】

そうそう、到着直後に両替をしたんだけれども、どうも少しレートが悪かった気がしてならない。手数料が平均いくらかかるか調べてくるべきだった。

ユーロは国内で両替できるんだけど、トルコリラは現地で両替するのを薦められたのだ。領収書を出してもらうんだった。

後、乗り継ぎのUAEディルハムも現地で両替しておくといい。水を飲みたいし、乗り換え時間が長いと何か食べたくなるし。今回は機内食が何となく合わなかったうえに飛行機に酔ったので、現地調達のフルーツ盛り合わせと日本から持ってきたオールブランでしのいだ。

混雑具合・予約の必要性

観光客は多いが、オーバーツーリズムで店に入れないということはない*2

トプカプ宮殿は平日の朝早起きすれば、夏のバカンスシーズンでもちょっと並べばすぐに入れた。ドルマバフチェ宮殿も、同じく予約をしていった方がいいと書かれていたが、これもほぼ並ばずに入れた。アヤ・ソフィアも同様。

本当はドルマバフチェ宮殿を予約しようとしたのだが、公式サイトにはそれらしい窓口がなかった。なので、行ったところ勝負にしようとしたところ、何の問題もなく入れた。

「宮殿 予約」で検索すると非公式のガイドがいくつかヒットする。だが、説明を読む限り、並ばなくてよくなるのと、周囲を15分くらいガイドしてくれるだけのサービスで、その割には割高に感じられた。

なお、この両者はパスポートを預けて音声ガイドを借りる。返却は別の窓口なので同じところに並ぶ必要はない。

ただし、この記述については一切責任は取りかねる。

 

交通事情

イスタンブールはヨーロッパと比べても渋滞がひどいらしい。
現に、空港からホテルに向かう車が、イスタンブール市街に入った途端に進まなくなった。徒歩で街を観光していた時にも思ったのだが、大通り沿いではいつも渋滞しており、ひっきりなしにクラクションが鳴っている。これは欧州の他の都市では経験したことがない。
なので、イスタンブール市内から空港に向かう帰りの車を時間に余裕をもって手配するか、公共の交通機関を使うことをおすすめする。

個人的に車を手配することが多いのは、ユーラシア大陸をまたいだ到着直後だと、注意散漫になっているからだ。

客引き


アヤソフィア、ヒッポドローム、スルタン・アフメト・モスク(通称ブルーモスク)の周囲は観光の中心地のため、不審な偽ガイドらしい人物に声をかけられるケースが多かった。
日本語で話しかけてくる相手に対しては(あるいは英語でも)、残念ながら警戒したほうがいい。「物を落しましたよ」と言われたときも、最初は日本語のわからないふりをして返事をしなかった。本当に大切なものを落したのなら追いかけてくるだろうからだ。
一度など、スルタン・アフメト・モスクの入り口を探していたときに、「こっちは閉まってるよ」と教えてくれたのだが、彼がついてくるのを断ると「あなたのせいで日本を嫌いなっちゃうよ」と脅してきた。いい気持ちはしないが、脅迫するような輩の相手をしてもろくなことにはならない。結局スルタンアフメトモスクは閉まっていなかったし。もしかしたら、スルタンアフメット1世廟が閉まっていると教えてくれたのかもしれないが、どっちにしろ怪しい。
あまりにもうっとおしいので、ホテルの最寄2駅のうち、客引きのいない方を常に使ったくらいだ。
一方、公式の学生らしいガイドもいて、彼らは「Ask me」と書かれた青いバスケの青いビブスみたいなのを着ている。彼らのおかげでトラムのチケットの買い方がわかった。

あとトルコアイスの店員さんは愛想がいいが、パフォーマンスが派手過ぎて(コーンをつかもうとしたらすり替えたり、棒でこっちをつついてきたり)、好きな人は好きだが、やや鬱陶しいくらいまでにノリが良い。ただ、これも店次第だろう。

食事

おいしかったけれど、観光客向けの店で食べたせいか、渋谷や市ヶ谷に店のある「アンカラ」のほうがおいしいところがほとんどだった。そっちが日本人向けにしているのか、それとももっと辛いメニューを頼むべきだったか、それはわからない。

その他

本当に1日5回祈りへの呼びかけが聞こえてくるのには感動した。かなり大きな声なので面食らったが、一昔前のお寺の鐘の音のように、そこで暮らす人々にとってはあって当たり前のものなのだ。アヤソフィアの側面にトルコ語で「アッラーのほかに神はなし」とライトアップされていた。

犬や猫があたりを歩き回っている。モスクで堂々と猫が寝ていることもある。鳩も入り込んでくる。生き物は概してかわいがられており、皆毛並みがいい。
古本屋街でも日本の漫画がいろいろと売っていた。王道のジャンプ系だけじゃなくて、伊藤潤二も売ってたのには驚いた。ホテルの従業員さんも日本の漫画が好きで、「呪術廻戦」と「地獄楽」が推しらしい。また、日本語の書かれたシャツを着た子供がそこそこいる。

子どもと言えば、スュレイマニエ・モスクの周辺では、水売りの子どもがいた。片言の英語で「ウォーター、ウォーター」と叫んで水を売っているが、おそらく児童労働なのだろう。

ところで、ときどきツイッターをはじめとしたSNSなんかで、「海外では日本みたいに下品な広告はない」「いや、あっちの方がひどい」などと議論をしているのを見る。自分の実感としては、ここ10年で日本も向こうも変わった。10年前に一度スペインを訪れているのだけれど*3、確か10年のヨーロッパでは駅や広場のキオスクで無修正のエロ本が売っていたが*4、今では見かけなくなった。ただ、ヨーロッパも広いので、地域ごとの対応はかなり違うだろう。5年前のウイーンでは見かけた気もするし、そうでなかったかもしれない。ちゃんと見ていたわけではない。ただ、バルセロナでは明るい感じのカップルで入れそうなアダルトショップは表通りにあったし、卑猥なジョークの書かれたお土産もけっこうあった。何が適切で何が不適切かの感覚は、やはり土地によってかなりずれているようだ。

で、実はガイドなしの公共交通機関で回ることの良さはそこにあって、その国の明るい面だけでなく、明るくない面も見て見聞を広げられる。児童労働だったり、貧困だったり、人種差別だったり。たとえば地元の人びとから遠巻きに見られている(無視されている)ロマの人びとを見ると、安易にロマンチックな「ジプシー」のイメージは表現としては使いづらくなる。

 

なお、バルセロナについての記事は書くかもしれないし書かないかもしれない。
ただ、これはバルセロナに限らないことだが、道で立ち止まって地図を開くときには注意したほうがいい。場所によっては物乞いや目の焦点のあっていない人が近づいてくる*5

 

以上。

 

注意点ばかり書いたのでネガティブに聞こえるかもしれないが、宮殿もモスクも素晴らしかった。

西ヨーロッパとも東アジアとも違う理念で建てられている建築物を見るのは大変に楽しかった。アヤ・ソフィアもモスクになって見られなくなった場所があるとはいえ、良いものを見せていただいた。

そしてメフテル! これだけのためにトルコを訪れる値打ちがある。軍事博物館の展示をほとんど見られなかったのが残念だ*6

バルセロナもガウディや同時代のモデルニスモ建築が、自分が普段暮らす世界とは違う原理で設計されているのを見て、これが海外旅行の醍醐味だと楽しんだ。建築を見るためにもう一度バルセロナを訪れたいと思ったほどだ。

それぞれの施設の感想は別の記事で書くかもしれないし、やめるかもしれない。

ネタバレになるからやめておいた方がいいかな。

*1:それからバルセロナにも

*2:これはバルセロナでもそう

*3:その時に熱を出してバルセロナに行けなかったから、後述するように今回のルートに組み込んだ

*4:同性愛男性向けのも売っていた。

*5:物乞いに寄付すべきかどうかは長くなるので省く。

*6:「ジェッディン・デデン」以外にももう1曲知っているのがあったけど、これはcivilization6のおかげ。お菓子のお店でも別の知っているトルコ音楽が流れた。

最近やったゲーム

Civilization6


ずーっとやってきて、序盤の未知の世界を開拓・探索していくのがとても楽しかった。AIを出し抜いて入植すると気分が良かった。だが、毎回マップこそ違うが、同じような戦略で勝とうとしていると気づき、これでは同じことの繰り返しだと悟る。実績解除を狙ったプレイは普段とは違う行動を強いられるので楽しかったが、やはり1プレイに6時間以上かかるのはしんどく、アンインストールした
なお、何度か最も難しい神難易度でプレイし、クリアこそしたものの、ストレスのほうが強かったため、大抵は普通の難易度でプレイしていた。
短い時間でクリアできるシナリオも堪能したし、全体で800時間はプレイしたし、もういいや。

 

Fit Boxing2


元々週に一度近所をジョギングする習慣だったのだが、昨今の夏の異常な暑さには生命の危機を感じていた。汗だくになるのは気持ちがいいし、逆に冬に薄着で走って徐々に身体があたたまりこれまた汗だくになるのも快感だったのだが、激しい温度差は身体にあまりよろしくないらしい。
それに、近頃はもっときっちり家事をするようにしているし、土日の両方に用事があると週に一度という目標が達成できない。そんな事情もあり、フィットボクシングを始めることにした。
メリットは家から一歩も出なくても運動できることで、遠くまで走るときのように雨が降りそうかどうかを気にかけなくて済む。それに、基本的に自分は面倒くさがりだ。ジム通いからジョギングにしたのも、荷物を準備して家を出てロッカーで着替えてトレーニング機械の順番を待って、といったことがすべて煩わしかったからだ。フィットボクシングの場合、家を出るという手間さえなくなる。おかげでほぼ毎日運動できている(ただし週に一度はサボってもいいことにしている。私用でできない日に罪悪感を覚えたくないのだ)。
単純に運動するのと違って、パンチのタイミングがいいといちいち効果音が鳴るのもやる気をさせてくれるのでいい。
大抵は寝る前にやっている。寝る前に激しい運動をすると眠りが浅くなるというけれども、特にそんな悪影響は感じられない。テレワークのときは朝にやっていたこともあったが、なんだかんだで朝の家事に時間を取られている。

 

十三機兵防衛圏


ジュブナイルSFのど真ん中を貫いている。少しSF設定を詰め込み過ぎている気もするが、小説ではなくゲームならこれくらいでちょうどいい。1985年を舞台にした近過去SFとしても面白い。
近過去SFに最近は関心があるのだが、これが単純なおっさんのノスタルジーにしないためにはどうすればいいのかは面白い問題だ。例えば過去の理想化ではなく、再解釈は建設的批判が入ればいいのだろうか。土曜日の日経の書評では「文学は予言する」の欄で、歴史小説は過去を舞台にしても現代を描いていると指摘されていたけれども。
さて、このゲームは一見するとハッピーエンドだが、数えきれない失敗して滅んで行ったループの存在があるし、エンディング以降に解放されるイベントでは、繁殖した無数の移民船が宇宙を飛んでおり、主人公たちと似たような経過をたどった世界が複数存在すると示唆されている。しかも、その世界が救われるかどうかの保証はどこにもない。実はあまりにも残酷な世界観だ。地球人類は滅亡しているし、無数の怪獣に滅ぼされるループが発生している。数千回のループで何人死んだんだって考えると明るいラストも実は怖くてぞっとする。イチャイチャした雰囲気でごまかしているけど、根底の設定がハードすぎる。……もしかしたら面白いSFを作るためには、できるだけ残酷な設定を考えるといいのかもしれない。
あとは操作性の問題。自分でキャラが動かせるせいか、分岐がほぼないのに没入感があるし、TENET以上に入り組んでいるシナリオが苦痛にならない。探索エリア(自由に移動できる範囲)が限られているのもいい。広げすぎると13ものストーリーをクリアする手間が膨大になりすぎるが、そこを工夫している。ただテキストを読むだけにもしていないのがうまい。
あと、漫画的にキャラクターをデザインしていて見分けやすくしているのもうまいと思う。女子勢全員がヘアスタイルだけじゃなくて靴下も長さが違うと気づいたときには驚いた(男子勢はファッションや髪形のバリエーションが少ないので苦労の跡がある)。
キャラ語りもするのも楽しそうだ。
関係ないけど、もう自分もいい年なので、男女問わず高校生くらいの子どものキャラがお腹を空かせている場面がでてくると、お腹いっぱいおごってやりたくなる(そういうキャラばっかりなんだ)。
あと、ゲームをしている友人の前を横切ると「見えねぇ!」って叫ぶのにはめちゃくちゃ笑った。

 

ネオアトラス1496


Civ6の序盤の世界探索が好きだからこれもハマるだろうと思ったが、ジパングまでたどり着いてやめている。
何でやめてしまったのかを考えると、マップ探索をしているとちまちま報告が入ってやるべきことが中断され、さっきまで何をしていたのかわからなくなるからだ。これはチョコボ系のおつかいゲームとも共通しているが、同時並行的にいろんなことを頼まれ、ToDoリストが溜まってくと、リアルの仕事と気持ちの上では変わらなくなり、気分転換にならなくなってしまう。
基本的に僕はゲームがド下手で、スーパーマリオドンキーコングのようなアクションゲームは序盤で詰み、RPGはレベル上げで飽き(ポケモンでさえ飽きる)、パズルもなんだかわからなくなり、桃鉄やciv6のようボードゲームばかりに結局はまる。
言い換えるならば
・反射神経を問わない。リアルタイムでない。
・ターン制でボードゲームのように熟考する時間が持てる
・同じステージを何度もやるような、周回的なやり込みがない(RPGのレベル上げ的な)
・エリアの探索範囲が広すぎない
・分岐が多すぎない(完璧主義で、多すぎるとすべて回収しないといけないと不安になる)
あたりが好きなゲームだ。

 

・雀魂


友人に麻雀のルールを覚えたいと頼んだら薦められた。なんで麻雀を覚えようかと思ったのかというと、civ6をアンインストールしたあとに、もっと短い時間で終わる頭を使うゲームが恋しくなったからだ。
年末年始にプレイしていたが、最近はあまりやっていない。フィットボクシングで時間を食っているせいだろう。

以上。
文章をうまく書こうとは思わず、思ったまま綴ってみた。

最近のボドゲではマーダーミステリーも面白かった。

近況

ある日のことである。
入院している祖父の病状について説明を受けるため、実家に戻っている母と叔母が病院まで出向くことになった。そのあいだ、認知症の祖母の様子を見ていてほしいと頼まれた。そこで半休を取り、タクシーで駆け付けたのだが、そのタクシーの運転手さんから自分がいかにモテなかったかを延々と語られ、いたたまれない気持ちになった。
この運転手さん、こちらのプライベートについて踏み込んできたので、これは少し苦情を言ったほうがいいだろうかと思い、所属している会社を調べたら、県下で最も評判の悪いタクシー屋の一つであったとさ。なので、これは苦情を言ってもダメだろうな、と諦めた。

それはさておき。自分が書いてきた作品のうち、このおじさんのモテなかった自慢の域から脱しているものがどれほどあるだろうか。そんな疑いにさいなまれてしまったのである。

自分にとっての何度も書いてしまうテーマは、自分を苦しめてきた疾患と、自分には魅力がないのではないかという疑念である。しかし、これは小説として語るに値するのだろうか。
もちろん個々人の苦しみには平等に価値があるとはいえ、我がことを離れた普遍性を持って書けていただろうか。あるいは、時代のはやりに乗れるだろうか。そんなことを思うのである。
そんなことよりも、自分の抱えている問題については、行動して何とかしてしまうのがずっといい。確かに、行動して挫折した経験を作品にしていた面もあるけれど、失敗を振り返るなら小説でなくて日記でよくないか?

先ほど、おじさんの話からいたたまれない気持ちになったと書いたけれども、自分が小説を書くときのモチベーションの一つが、こういういたたまれない気持ちになったことを頭の中から追い出すことである。傍らで見ていて悲しくなったこと、見ていてしんどくなる姿、そんなものを小説の中の光景として表現することで、自分にとって受け入れられる形に変換しようとしたのだ。
しかし、これは嫌なことを何度も反芻することにも似ている。小説にしなくても自分がその出来事を消化できるようになってしまえば、飲み込みやすくするために小説にする意味がどれほどあるのか。今ひとつわからない。今までは書かないと正気を失ってしまうという危機感があったのだが、それがすっかり失われてしまっている。

正気を失う! まさにそういう生々しい実感があった。言いたいことや伝えたいことで頭がいっぱいで居ても立っても居られずに、毎日のように数千字を書いていた。かつては四六時中小説のことを考えていたのだ。なのに、創作意欲が驚くほど消えてしまった。ずっと暇なときは大抵プロットを出すかアイディアを出すか空想するかしていたのに、その習慣がきれいに消えてしまった。確かに楽にはなった。けれども、こうして書かない/書けないことにまつわる愚痴を書きたくなるほどには、確かに創作は長い間自分の習慣だった。

もちろん、試みなかったわけではない。一度編集にプロットを送り没になっている。また、「ファウスト」と「十二国記」を合わせたみたいな設定を頭の中で練ったこともある。例えば王に即位すると残りの寿命がきっかり五十年になる世界で、どんなふうに世を治めるか(死にかけた人間を無理やり王にするとか、そんなあらすじを考えた)。逆に、寿命がわからないが必ず死に際の光景が見えるので、その運命を延期させようと奮闘するギリシア悲劇めいた王の話とか。王の寿命は五百年、重臣は三百年、そんな時間の流れを持つ世界だとか。
しかし、自分の心の底から出てきた設定ではなく、どうしても表現したいテーマやキャラがあるわけでもなく、そのまま宙に浮いている。設定は思い浮かぶのに、こういうキャラクターやストーリーを表現したいというのが見当たらない。

SF的なものも難しい。SFとして面白い思い付きや設定が浮かんでも、それをキャラの対立として表現できるのか。ただの論文というか議論になってしまわないか。そこに罠があり、いつもここでつまずいている。つまずいたまま、止まってしまった。
今となっては何でもいいので文章を書きたいという感覚は、仕事中にふと浮かぶもので、それは仕事をさぼりたい気持ちにほかならず、現に帰宅しては軽く家事をして運動して、それで一日が終わっていく。

このままでは小説以外の文章も書けなくなると危機感を持ち、村上春樹カズオ・イシグロの作品についてはてな匿名ダイアリーにつづったこともある。ブックマークはだいたい四十と三十。悪くない。しかし、フィクションは全くアウトプットできていない。AIのべりすとに続きを書かせてたわむれる程度だ。
小説よりもエッセイやレポートのほうが向いているのでは? いや、誰かにこういうのを書いてほしいというリクエストを受けつけてはどうだ? はたまた二次創作は? 自分の性癖を満たすための小説は? そんな考えが頭にぐるぐるしている。

ときおり強烈に、同期にまた会いたい、それで同人誌に参加したい、何らかの形で創作にかかわり続けたいという思いに駆られることもある。だが、三千文字のフィクションさえ書くことができるかどうかの自信さえ失っている。何かを架空の他人に仮託して、数万文字を何ヶ月もかけて書くことに限界を感じている。
それとも、またSF創作講座の全作品読んでレビューをすれば戻って来られるだろうか? マシュマロの公式ツイッターにあったように、短い嘘日記を書けば虚構を作り出す能力は復活するんだろうか?

なぜ書けなくなってしまったのかを突き詰めると、やっぱり自分を信じられなくなったからだろう。自分の頭の中のヴィジョンは何にも代えがたく、自分の表現したい熱意は枯れることがなく、自分の文章は最高だとは思い込めなくなってしまった。ただし、自分の悩みこそが世界で一番深いという思い込みで小説を書いていたならば、悩みに対してやり過ごす方法を覚えてしまえば、ある種の純文学は書けなくなる。他人のことを書こうとしない限りは。

自信を失ったきっかけは、やはり心を込めた作品に対し、最終選考で厳しい言葉が並んだためで、その言葉を浴びせた特定の数人のせいだ、といつの間にか思い込んでいたのだけれども、当時の日記を振り返ってみると、それよりは、実作を出しまくってもなかなか伸びなかったことや、他人の伸びるスピードの速さのウエイトが大きかったようだ。このように、人間とは一般的に単純な物語とわかりやすい敵を求めるものなのだと、再確認している。ああ怖い。日記をつけていてよかった。

それで、小説を書かなくなった時間は何をしているのかと言えば、任天堂のフィットボクシングである。身体を動かすことは、しんどい経験を言語化していくのと同じくらい心身の健康にプラスだ。

こういう時に、以前にかけられた「才能がある」とか「頭がいい」との言葉を思い出すと、息苦しくなることがあって、何でかっていうと、自分の中の無意識の前提として、「その能力で何かをなさないといけない」というのがあり、そこが刺激されるからなのだろう。別にそんなことないのにね。何かを成し遂げるべきだというのも一つの価値観に過ぎないのだ。

とはいえ、こういう形であっても、気持ちを整理するためだけでも、文章を書くこと自体は苦痛ではない、というか楽しいと思ってしまうので困ったものだ。やれやれ!

さて、なんだかモテない自慢のおじさんについて書いたことが、そしてなんで書いていないかという言い訳が、このブログの最新記事になってしまうのはなんだか悲しいので、ゲームについて次の記事にでもまとめようと思う。

【追記】

書けなくなったとしても、人生最後の日に後悔しそうな感じがしないし、なにか悩んでいることがあったら、身近な人とゆっくり話すほうが、幸せになれるような気がしている。

【追記2】

何か小説を書きたいという漠然とした思いの根っこは自己受容の試みだ。道徳的に不完全な自分自身を受け入れるために、人間の愚かさを表現する小説という形式に落とし込もうとしていたのだ。

描画AIの偏見を目の当たりにした。あるいはセクシーなアスリート。

最近いろんなAIが有料サービスで描画してくれる。

そんななか自分も無料のサービスで試してみたが楽しい。

www.craiyon.com

無料だからか、解像度が低かったり、人間を描いてもらおうとしてもなぜか顔がうまく表示されないなどの問題がある。無料だからからもしれないが、それに文句を言うのではなく、その意外性をみて楽しんでいるのである。

例えば日本列島の地図を描くよう頼むと、以下のように左右反転したものがなぜか多い。理由がわからないが想像するのは楽しい。鱗みたいになっているのは県境だろうか?

 

そんななか、おふざけで「セクシーなアスリート」と入力してみた。すると、意外なことが起きた。

人体のバランスがアスリートのものでないことはさておき(そしてなぜか自撮りっぽいのも含まれるのはなぜかわからないが)、全員白人女性なのである。

そこで、「セクシーな男性アスリート」と入力するとこうなる。

 

さらに「セクシーな黒人男性アスリート」でこうなる。

 

以上のことより、AIに与えられたデータが、人種的及び性的にバイアスがかかっていることが明らかになった*1

顔が映っていたりいなかったりするのは、自撮りのデータなのか、身体にばかり注目する(ポルノ的な?)画像がネットにあふれているからなのかはわからなかった。

比較のため「セクシーな黒人アスリート」も貼っておく。こんどは男性ばかり。

「セクシーな黒人女性アスリート」はこう。

バイアスがかかっていることは前から聞いていたが、AI自分の手で動かしたことによる偏った結果を目の当たりにすると「うーむ」と考え込んでしまうのである。

 

あまり深刻ではない話だと、たとえば「font」*2「hiragana」で架空文字っぽいものが生成されるので面白い。ただ、これはAIの解像度が高すぎないことによる一時的な現象であるかもしれない。

以上。

 

*1:元サイトの注意書きを読むと、インターネットから拾ってきた画像なので有害な偏見を含むかもしれないとちゃんと書いてある。

*2:このキーワードだと架空文字っぽいのが出てきて面白い! ってツイートを見かけたのだがどこだったか忘れた。

架空文字(3)

常々思うのだが、架空文字とn進法は相性がいい。

特に3進法とアルファベット26文字はぴったりだ。ヌル・空白を含めてぴったり3進法3桁で表現できる。就職試験のSPIの論理パズル問題なんかにもたまに出てくる。

 

 

2進法5桁でもいい。灰羽連盟のアニメにも出てきたね。

昔、トールキンの影響を受けて二進法をもとにしたルーン文字もどきを作ったことがある。同じように左右に枝をつけたり、鏡合わせにしたりしていた。

あとはフリーメーソン暗号もどきとか。なつかしい。

 

 

このあたりブラ-ケット記法に似ている。

<>> > |>> <> < <<> ||>> < <>> < > <|>> ||> <|| <<|
<<|>> >
||>> < <|>> |> <||
>> <<| <|>> <<> |>> <>> <
<|>> <
<<||> <|| <<|>> > <

これだと紛らわしいので

<>>・>・|>>・<>・<・<<>・||>>・<・<>>・<・>・<|>>・||>・<||・<<|

<<|>>・>
||>>・<・<|>>・|>・<||
>>・<<|・<|>>・<<>・|>>・<>>・<
<|>>・<
<<||>・<||・<<|>>・>・<

となる。デザインを選ばないとリーダビリティが非常に悪い。

いっそのこと中黒を入れた4進法にしたくなる。

アドバイス(自分向け)

昔いただいたメール等も読み返してまとめた。

過去のアドバイスを読み返すのはつらく、流し読みしかできなかったが、基本的な問題点の傾向はほぼ同じだ。

自分に向けてチューニングしたアドバイス集。書くことがあるとすれば、ここに示したポイントを振り返りたい。

 

  • ハードSF的な設定は良い。
    • スケールが大きいのも良い。
    • ただし細部が甘いことがある。
      • この設定だったらきっとこうなる、どんな事件が起きる、登場人物はこう考えるだろう、という論理が一貫していないといけない。
    • 設定は直接語らず、示そう。
    • 議論だけで話をすすめない。
    • 文理問わず知識のひけらかしだけで話をすすめない。
      • 詰め込み過ぎない。
    • ハードな部分を大切に。
      • 作中のテクノロジーの水準を合わせる。
      • 過度に現代的に過ぎると、今の問題について言及しただけで終わる。
    • もっとぶっ飛んだ設定でもいい。
  • 解かれるべき謎は何か?
  • 文章は読みやすい。
    • ただし、ハードな舞台だけれども恋愛を主軸に据えた場合、文章は柔らかくしたほうがいい。文体を工夫せよ。
    • 濃く書く部分と薄く書く部分を分ける。
    • どんな読者を想定しているか?
    • 入りやすい入口、とっかかりが大事。
    • 何の話か分かりやすいように。起承転結が大事。
    • 生理的な表現はいいものがある。
  • 論理展開をいい加減にしない。
    • 主人公が謎を解くための伏線をきちんと張っておく。
    • 思い付きではダメ!
  • ラストは説明するのではなく、絵で示す。
    • 特に台詞で説明しすぎない。
      • 謎解きが台詞ですべて解決というのはダメ。
      • 絵になる風景を!
    • 最初と最後で主人公は成長しなければならない。
    • ストーリーは飛躍させてもいい。
    • 壮大に広げるか、気持ち悪くたたむか。
    • ありきたりな結論ではSFとしてダメ!
      • 当然とされる価値観を疑えるのがSF。
      • さらに次の世界・探求の予感があるといい。
      • 新しい価値観が欲しい。
    • 同じようなオチにしない。
  • 逆境の中での成長を示す。
  • 無駄な場面、趣味でやっている描写は消す。
    • どの場面にも意味・伏線・機能がいる。
    • 思いついたもの全部を入れる必要がある。
  • 世界観は、短編の場合は現実世界と一か所違う程度でいいかも。
  • 二つの選択肢の間で迷い。厳しい選択を迫られるほうが面白い。
  • 対話は面白く。
    • 義務で会話しているようなのはダメ。
    • 説明の台詞は必要な分だけ。
  • 冒頭の掴みは大事。
    • 何の話か冒頭で分かるように
  • アクションを書くのはうまくないのでやめる。
    • 紋切型。コンテのト書きっぽい。
  • キャラクターを魅力的に。
    • 設定にキャラクターが引っ張られている。
    • ステロタイプになっている。
    • ストーリーはキャラクターで駆動させないと。
    • モテないキャラばかり書いてもいいとは限らない。
    • 一人称は避けたほうがいい?
    • 無理して社会派にしない。
      • 人文系の議論みたいになってしまう。
      • 社会派だと新しい価値観の提示のハードルが上がる。
    • やりたいことをやろう。
    • 登場人物の行動原理は明確に。
    • 年齢は若いほうがよさそう。
  • 十代の初恋的なものは避ける。
    • 青春を引きずりすぎない。
  • とはいえ君と僕の関係性はいい。
  • なぜここを舞台にしたのか? も雰囲気だけで決めない。
  • 親とか支援者とかが優しすぎないか?
    • もっと残酷でいい。
  • メタフィクションばかりやらない。
    • やるなら枠物語の中と外の相互作用が大事。
    • ありきたりなことばかりやらない。
  • 素の自分だけで書かない。
  • テンポが遅い。
  • 言い訳しない。
  • 自己分析が甘い。
  • 女性描写はいい。
    • ただし「私だって内面がある」という独白ばかりやってもしょうがない。
  • 人間じゃないAIを人間的に書くのはいいが、じゃあ人間的って何? ってのを突き詰める必要がある。
  • 登場人物同士の共通の課題というのはどうか。

 

以上。

 

【追記】友人からのコメント。

  • 読みたいものを書こう。
  • 先に謎解きを考えるよりも「もしもこうだったら」「What if」からスタートしたほうが面白い。
  • 三行のログラインは面白そうな次回予告、そこからつなげていく。
  • アイディアから根幹のストーリーが生まれ、そこから要請されるキャラクターを固める手法がある。
  • 個人的な話を書いても、外へと広がっていく作品とは何か。

それから個人的に、

  • 使えそうなパターンをすべて書き出す。
    • 人間関係。
    • サイエンスの分野。
  • 登場人物の共通点・相違点は何?

【追記】

ひっくり返そう!

なんでも事情を冒頭で説明せず、話が真ん中くらいまで進んでから謎を解こう。変なあだ名の由来とかね!

主役はキャラとストーリーであって科学的正確さではない!