トルコ、イスタンブール旅行での注意事項(あるいはインフレについて)

イスタンブールに行ってきた*1

イスラム世界を舞台にして書いた小説の責任を取るためにイスラム圏に行ったというわけではなく、昔から行きたかった。
そして、いつものように「地球の歩き方」のお世話になった。
だが、トルコ編は2019年に発売された版が最新版で、今となっては事情が大きく変わっていることが多い。そこで、他の人の助けになるかもしれない点について、メモしておく。

インフレ、お金のこと。

博物館の料金は大きく値上げしている。

左が地球の歩き方、右が2023年8月の実際の値段で表記する。

トプカプ宮殿(ハレム含む) 60トルコリラ → 950トルコリラ

地下宮殿 20トルコリラ → 350トルコリラ(夜は550トルコリラ

ドルマバフチェ宮殿 90トルコリラ(全施設の見学)→ 650トルコリラ(全施設の見学、イスタンブール市民以外)

軍事博物館 10トルコリラ → 300トルコリラ(ここはクレジットカード支払いのみ受け付けている)

 

ただし、アヤ・ソフィアはモスクになったので寄付制。立ち寄ったほかのモスクも寄付制。

かなりインフレが激しく、チップなどに使えそうな小銭がなかなか手に入らないのは困った。1トルコリラ硬貨を見かけたのはほんの数回だ。

食費もかなり上がっていて、400トルコリラ使うこともあった。お土産もたくさん買い込んだので、なんだかんだで1日に1000トルコリラ弱使ってしまった。

だたし、これは8月に自分が行った時点なので、また値上げしているかもしれない。

責任は取りかねる。

 

【追記】

そうそう、到着直後に両替をしたんだけれども、どうも少しレートが悪かった気がしてならない。手数料が平均いくらかかるか調べてくるべきだった。

ユーロは国内で両替できるんだけど、トルコリラは現地で両替するのを薦められたのだ。領収書を出してもらうんだった。

後、乗り継ぎのUAEディルハムも現地で両替しておくといい。水を飲みたいし、乗り換え時間が長いと何か食べたくなるし。今回は機内食が何となく合わなかったうえに飛行機に酔ったので、現地調達のフルーツ盛り合わせと日本から持ってきたオールブランでしのいだ。

混雑具合・予約の必要性

観光客は多いが、オーバーツーリズムで店に入れないということはない*2

トプカプ宮殿は平日の朝早起きすれば、夏のバカンスシーズンでもちょっと並べばすぐに入れた。ドルマバフチェ宮殿も、同じく予約をしていった方がいいと書かれていたが、これもほぼ並ばずに入れた。アヤ・ソフィアも同様。

本当はドルマバフチェ宮殿を予約しようとしたのだが、公式サイトにはそれらしい窓口がなかった。なので、行ったところ勝負にしようとしたところ、何の問題もなく入れた。

「宮殿 予約」で検索すると非公式のガイドがいくつかヒットする。だが、説明を読む限り、並ばなくてよくなるのと、周囲を15分くらいガイドしてくれるだけのサービスで、その割には割高に感じられた。

なお、この両者はパスポートを預けて音声ガイドを借りる。返却は別の窓口なので同じところに並ぶ必要はない。

ただし、この記述については一切責任は取りかねる。

 

交通事情

イスタンブールはヨーロッパと比べても渋滞がひどいらしい。
現に、空港からホテルに向かう車が、イスタンブール市街に入った途端に進まなくなった。徒歩で街を観光していた時にも思ったのだが、大通り沿いではいつも渋滞しており、ひっきりなしにクラクションが鳴っている。これは欧州の他の都市では経験したことがない。
なので、イスタンブール市内から空港に向かう帰りの車を時間に余裕をもって手配するか、公共の交通機関を使うことをおすすめする。

個人的に車を手配することが多いのは、ユーラシア大陸をまたいだ到着直後だと、注意散漫になっているからだ。

客引き


アヤソフィア、ヒッポドローム、スルタン・アフメト・モスク(通称ブルーモスク)の周囲は観光の中心地のため、不審な偽ガイドらしい人物に声をかけられるケースが多かった。
日本語で話しかけてくる相手に対しては(あるいは英語でも)、残念ながら警戒したほうがいい。「物を落しましたよ」と言われたときも、最初は日本語のわからないふりをして返事をしなかった。本当に大切なものを落したのなら追いかけてくるだろうからだ。
一度など、スルタン・アフメト・モスクの入り口を探していたときに、「こっちは閉まってるよ」と教えてくれたのだが、彼がついてくるのを断ると「あなたのせいで日本を嫌いなっちゃうよ」と脅してきた。いい気持ちはしないが、脅迫するような輩の相手をしてもろくなことにはならない。結局スルタンアフメトモスクは閉まっていなかったし。もしかしたら、スルタンアフメット1世廟が閉まっていると教えてくれたのかもしれないが、どっちにしろ怪しい。
あまりにもうっとおしいので、ホテルの最寄2駅のうち、客引きのいない方を常に使ったくらいだ。
一方、公式の学生らしいガイドもいて、彼らは「Ask me」と書かれた青いバスケの青いビブスみたいなのを着ている。彼らのおかげでトラムのチケットの買い方がわかった。

あとトルコアイスの店員さんは愛想がいいが、パフォーマンスが派手過ぎて(コーンをつかもうとしたらすり替えたり、棒でこっちをつついてきたり)、好きな人は好きだが、やや鬱陶しいくらいまでにノリが良い。ただ、これも店次第だろう。

食事

おいしかったけれど、観光客向けの店で食べたせいか、渋谷や市ヶ谷に店のある「アンカラ」のほうがおいしいところがほとんどだった。そっちが日本人向けにしているのか、それとももっと辛いメニューを頼むべきだったか、それはわからない。

その他

本当に1日5回祈りへの呼びかけが聞こえてくるのには感動した。かなり大きな声なので面食らったが、一昔前のお寺の鐘の音のように、そこで暮らす人々にとってはあって当たり前のものなのだ。アヤソフィアの側面にトルコ語で「アッラーのほかに神はなし」とライトアップされていた。

犬や猫があたりを歩き回っている。モスクで堂々と猫が寝ていることもある。鳩も入り込んでくる。生き物は概してかわいがられており、皆毛並みがいい。
古本屋街でも日本の漫画がいろいろと売っていた。王道のジャンプ系だけじゃなくて、伊藤潤二も売ってたのには驚いた。ホテルの従業員さんも日本の漫画が好きで、「呪術廻戦」と「地獄楽」が推しらしい。また、日本語の書かれたシャツを着た子供がそこそこいる。

子どもと言えば、スュレイマニエ・モスクの周辺では、水売りの子どもがいた。片言の英語で「ウォーター、ウォーター」と叫んで水を売っているが、おそらく児童労働なのだろう。

ところで、ときどきツイッターをはじめとしたSNSなんかで、「海外では日本みたいに下品な広告はない」「いや、あっちの方がひどい」などと議論をしているのを見る。自分の実感としては、ここ10年で日本も向こうも変わった。10年前に一度スペインを訪れているのだけれど*3、確か10年のヨーロッパでは駅や広場のキオスクで無修正のエロ本が売っていたが*4、今では見かけなくなった。ただ、ヨーロッパも広いので、地域ごとの対応はかなり違うだろう。5年前のウイーンでは見かけた気もするし、そうでなかったかもしれない。ちゃんと見ていたわけではない。ただ、バルセロナでは明るい感じのカップルで入れそうなアダルトショップは表通りにあったし、卑猥なジョークの書かれたお土産もけっこうあった。何が適切で何が不適切かの感覚は、やはり土地によってかなりずれているようだ。

で、実はガイドなしの公共交通機関で回ることの良さはそこにあって、その国の明るい面だけでなく、明るくない面も見て見聞を広げられる。児童労働だったり、貧困だったり、人種差別だったり。たとえば地元の人びとから遠巻きに見られている(無視されている)ロマの人びとを見ると、安易にロマンチックな「ジプシー」のイメージは表現としては使いづらくなる。

 

なお、バルセロナについての記事は書くかもしれないし書かないかもしれない。
ただ、これはバルセロナに限らないことだが、道で立ち止まって地図を開くときには注意したほうがいい。場所によっては物乞いや目の焦点のあっていない人が近づいてくる*5

 

以上。

 

注意点ばかり書いたのでネガティブに聞こえるかもしれないが、宮殿もモスクも素晴らしかった。

西ヨーロッパとも東アジアとも違う理念で建てられている建築物を見るのは大変に楽しかった。アヤ・ソフィアもモスクになって見られなくなった場所があるとはいえ、良いものを見せていただいた。

そしてメフテル! これだけのためにトルコを訪れる値打ちがある。軍事博物館の展示をほとんど見られなかったのが残念だ*6

バルセロナもガウディや同時代のモデルニスモ建築が、自分が普段暮らす世界とは違う原理で設計されているのを見て、これが海外旅行の醍醐味だと楽しんだ。建築を見るためにもう一度バルセロナを訪れたいと思ったほどだ。

それぞれの施設の感想は別の記事で書くかもしれないし、やめるかもしれない。

ネタバレになるからやめておいた方がいいかな。

*1:それからバルセロナにも

*2:これはバルセロナでもそう

*3:その時に熱を出してバルセロナに行けなかったから、後述するように今回のルートに組み込んだ

*4:同性愛男性向けのも売っていた。

*5:物乞いに寄付すべきかどうかは長くなるので省く。

*6:「ジェッディン・デデン」以外にももう1曲知っているのがあったけど、これはcivilization6のおかげ。お菓子のお店でも別の知っているトルコ音楽が流れた。