架空文字 (1)

子どものころから架空文字を作ることにはまっていた。発端は、子ども向けパズルの暗号だとか、ギリシアやロシアの文字を見たことにある。加えて、イギリスで暮らしていた頃、総合学習ルーン文字を見たからというのも理由かもしれない。いくつか、架空文字を作って遊んでいた覚えがある。

この遊びがもう少し高度になったのはトールキンの影響だ。エルフ文字(テングワール)は、文字の形と音価に関連があり、文字の表には音声学的な説明が付されていた。当時の自分は、よくそれを模倣しものだ。

以下はその一例で、おそらく中学生の頃に作ったものになる。文字の形に二種類あり、片方はフェニキア、もう一方はギリシアの文字を模倣したつもりだったと記憶している。「追加文字」という表現が明らかなトールキンだ。当時はインターネットが今ほど発達していなかったために、IPAの発音記号について調べるにもずいぶん苦労したと記憶している。あまり出来は良くないが、最初にデザインしたので思い出深い。

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ちなみに、この文字の名前は「ペオトゥッペヌップ」文字である。何となくアイヌ語のように聞こえなくもないが、アイヌ語はまったくわからない。發音とパ行が多いからそんな印象を受けるのだろう。何を考えてこんな名前を付けたのかはわからない。

 

こういう風に一から

 

字形を作るのは楽しかったが、一つ問題がある。それは、せっかく作っても解読表がなければ読み書きができないことだ。よって、通常のアルファベットを九十度回転させたものから創り出した文字もある。これは便利だが、一度解読法がわかってしまうと、第三者に容易に読まれてしまう。

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一つ考えたのは、セグメントディスプレイでアルファベットを表現し、これを2分割することで不可解な四角の列にすることである。一見するとこれはフリーメーソン暗号のようでもある。ただし、隣り合う視覚同士がつながることに気づかれる可能性があるので、この文字のマイブームはすぐに去った。

 

もう一つ考えたのが、文字の装飾性を高めることだ。当時、テングワールの影響を受けていた自分は、文字から出るストローク、文字の上下の三つの点やアクセント記号を多用して、ちょっと横にするだけではわかりにくくした。すべてを書くのが面倒なので、一部の例のみを示す。アルファベット1文字に対応する暗号が複数あるので、頻度分析に対する撹乱になる。

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なお、この字形はいくつかの限られた字画からつくられているため、形から逆算して規則的な音韻を当てた文字を作ろろとも目論んだが、ほとんどそれを使わなかった。

 

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もう一つのタイプは神代文字だ。特に、ヲシテの幾何学性や、一見すれば「丹」「夷」などの漢字にも似ているデザインにひかれた。もちろん偽史の類だが、人がこうした者に引き付けられるのは、暗号めいたものに魅力を感じるせいもあるだろう。

 

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この字形から、当時の自分の篆書や古代文字に対する偏愛が感じられる。また、一部の文字ではイとエをヤ行、ウをワ行と同じデザインにしており、神代文字の影響が濃い。

 

以上。今回はここまで。

アップロードしていくのは、一部を除いてとりあえず文字として使えるものだけにする。つまり、発音が決まっているものに限り、形だけが決まっているものではない。

 

飽きるまで続けるし、飽きたら中断する。