「SFの書き方」よりメモ その1

 

  この本を読み返して、個人的に役に立つと感じたところを、抜き出しておく。


第1回 定義

 

大森氏

 話を戻すと、七〇年代まではSFのブームが続いていたんですが、八〇年代後半からは、《ロードス島戦記水野良)に代表されるような異世界もの、のちのちライトノベルに発展していくファンタジイがどんどん勢力を拡大。九〇年代初めは架空線機が大ブームを巻き起こし、九〇年代後半はホラーが席捲する……というふうにかつてSFの周辺領域だったジャンルが次々と分離独立を果たしていく。

  

東氏

 ……(略)……日本のSFは昔から理系SFが中心だと思っていました。でもそれは客観的な認識としては逆で、九〇年代は文系SFの時代であり、それがゼロ年代になって変わってきたのだと。

 

小浜氏

 編集者が「これを書け」なんて言わないですよ。漠然と提案することはありますけど。基本的には著者の特質なりに対応します。

 

大森氏

 一般の小説であれば、たとえ驚きがなくても、人間が描けていたり、感動できたりすればそれでいいわけです。ところがSFというのは、どこかひとつ、読者をびっくりさせる仕掛けが必要になる。現実世界を舞台にした主流文学やミステリにない何かが、設定のどこかに必要なんですね。それは必ずしもいまの科学に裏打ちされている必要はないけれど、単なるサプライズとも違って何かしらの論理がなければいけない。

 

第2回 知性

 

長谷氏

 読み手の知性に対するアプローチを仕掛けられることが、SFというジャンルの特性だと思います。

 

大森氏

 「変な世界」を設定するなら、短篇だったら、よく知ってる現実から、パラメーターをひとつだけ変えるぐらいがちょうどいいのではないかということです。……(中略)……短篇一本で書くのだとしたらそのぐらい絞った設定のほうが書きやすい。

 

長谷氏

 ヴィジョンとドラマの関係性について補足しますと、両者が結びつくと非常に印象的な、いいシーンが生まれるのですが、ヴィジョンだけをポンと出しても多くの読者はついてきてくれません。……(中略)……SF的な想像力のヴィジョン一発で読者の印象に残したいなと思うのなら、それはドラマのクライマックスかオチの部分で描くのが一番安全な方法です。

 

長谷氏

 科学技術のニュースが題材を更新し続けてくれるので、SFジャンルに関しては小説のネタは尽きることがないのではないかと感じています。

 

長谷氏

 意識というのは、コミュニケーションをとることで初めて認識されるものであり、その理屈で行けば、AIと人間の間で正確なコミュニケーションがとれた場合に、人間側にも意識があるし、AI側にも意識が存在すると考えてもいいのではないかということですね。