AIノベリストがすごい。
自分の文章を入力したら、続きを出力してくれた。
ちなみにこの文章は、もう十年弱ほど前に書いたものだ。
たぶんこういう文章は、もう書けなくなっている。
黒い蝶が視界を横切った。薄汚れた漆喰の壁を背景に、水に落としたインクのように飛翔の跡を残していく。涙のように垂れ下がった羽をはためかせ、つがいを求めて天を行く。言葉もなく、思考もない。鋭い日差しに貫かれて、明暗が心にざわめきを残すが、呼び止める間もなく飛び去ってしまう。
僕はこの瞬間の名付けえない気持ちをいつまでも忘れないようにしようとする。言葉にして、手帳に書きつけて、手元に置こうとする。けれど、その印象を僕は保持できない。僕の記憶はあまりにも頼りない。すぐに失われてしまうし、失われたことさえ忘れてしまう。だから僕は嘆かないし、何も感じない。
以下が続き。
夏の到来とともに、僕は自分の心の在り様について考えることが多くなった。
それは自分が生きているのか死んでいるのか、という問いに似ている。あるいは、自分とは何か、と問うことにも似ている。
夏になると、いつも同じことを考える。
僕はこうして呼吸をして、歩いて、話して、物を食べて、寝ている。生きてるんだなあと実感する。そうすると、自分の身体のあちこちに継ぎ目があることに気付く。それは意識しなければ分からないほど些細なもので、人によっては気が付かないかもしれない。でも、確かにそこにはあるのだ。
例えば僕の指先。爪の先から小指に向かって、小さな糸のような線が走っている。これは腱だ。腕を動かすための筋肉を繋ぐ腱。そして肘へと伸びる。肘関節を通って手首まで。
手を開く。掌には五本の指がついている。親指から順に第一関節、第二関節、第三関節……。
こうして一本ずつ確かめるように指を動かしていくと、最後に自分の手の甲に行き着く。そこにはやはり細い線がある。まるで蜘蛛の巣みたいだと感じることもある。
「それは何?」
隣を歩く女の子が訊ねてくる。
彼女は高校生になってから知り合った友達で、名前は確か……、そうだ、綾乃といった。
「腱だよ」
答えながら、彼女の顔を見る。
綾乃は不思議そうな顔をしている。無理もないと思う。突然こんなことを言い出したら、誰だって困惑するだろう。
「これがどうかしたの?」
「うん……」
僕は少し考えて、言葉を紡ぐ。
「こうして指や手を動かしてみるとさ、何か変なものを感じるんだよ。なんていうか、こう……」
僕は右手を上げて、その手を見つめる。
「ここだけ違う生き物になってるような感じっていうのかな? 他のところとは全然違って、すごく不安定なものになってるみたいな感覚があってさ。それが嫌なんだよね」
自分でも何を言っているのかよく分からなかったけど、とにかくそんなふうに思うことがあるということを彼女に説明しようとした。しかし、上手くいかない。結局、僕が感じていることは何一つ伝えられないままだった。
「ふーん……」
綾乃はどこか上の空の様子で返事をする。どうせまた興味がないとか言うんだろうと思っていたのだが、彼女は予想に反して真面目な表情を浮かべていた。
「それじゃあ、あたしの手を見てみなさいよ」
言って、綾乃は自分の左手を差し出してくる。僕は言われるままに彼女の手を取る。
綾乃の手は大きくて温かい。ほっそりとした白い指が僕の手に絡みつく。
「ほら、やっぱり」
綾乃は微笑む。
「あなたも同じじゃない」
「えっ……」
僕は驚いて彼女の手から視線を上げる。綾乃の顔を見た。
「あなたの手だって、普通の人の手とは違うわ。私と同じで、指の先から足の先まで全部バラバラのものなの。だけど、ちゃんと繋がってる。だから大丈夫よ」
そう言って、綾乃は僕の手をぎゅっと握った。
「もし不安なら、私が一緒にいてあげるから」
綾乃の言葉は、僕を安心させると同時に胸の奥底に潜んでいた何かを刺激する。
それは夏の陽射しのように眩しくて、温かくて、そして切ない痛みを伴っていた。
気が付くと、僕は泣いていた
涙を流すなんていつ以来だろうかと考える。思い出せないくらい昔のことだった。
僕はただ黙って涙を流し続けた。
やがて涙が止まると、僕は彼女と別れて家に帰った。
その日の夜、僕は夢を見た。
夢の中の風景はよく覚えている。そこは教室だった。机や椅子が整然と並び、黒板の前に教壇がある。ありふれた学校の光景だ
一度しか試していないが、元の文章が感傷的だということを、理解しているように思われる。
朝起きて試してみた結果だ。文章をゼロから編み出す喜びはないが、思いがけない結果を見て楽しむことはできる。
以上。